悠々人生のエッセイ



真っ青で美しいサドルラス(スズキ科ベラ目)





葛西臨海水族館( 写 真 )は、こちらから。

 冬も本番の季節に入り、東北と北陸が1メートルになろうとする大雪になり、また西日本とりわけ九州までもが10センチほどの積雪に見舞われている。そうした中で、どういうわけか関東と東海地方だけが、寒風が吹きさらしてはいるものの、雪は降らずにおおむね曇りというお天気になっている。曇りなので、外で素晴らしい写真を撮れるということは期待できないから、久しぶりに水族館でお魚を撮ることにした。場所はというと、ここしばらく行っていないところが良いと思い、葛西臨海水族館にした。例のとおりiPhoneでチェックすると、自宅から40分以内で行けそうだ。千代田線に乗ってまず日比谷駅で日比谷線に乗り換え、八丁堀駅でまたJR京葉線に乗り換えるとよいらしい。

葛西臨海水族館の入口ドーム


 そういうことで土曜日の午前中、そのルートで出かけた。八丁堀駅での乗換えも、そう遠くはなくてスムーズに葛西臨海駅に着いた。駅を降りると、正面口の左手には観覧車があり、その近くにはホテルがある。水族館へは、そちらの方に行かずにまっすぐに進む。すると、写真でよく見るガラスのドームが見えてきた。中に入ると、さっそく出てきたのが、サメの水槽で、撞木鮫(Hammerhead shark)がたくさん泳いでいる。どう猛なサメだから、ダイビングでこの魚に出会ったりすると、覚悟しなければいけないらしい。もっとも、ダイバーの間ではウォッチングの対象として人気があるが、見ているうちに獲物にされてはかなわないので、私はご免被りたい。そういうことを思い出してぞっとし、早々にそこを退散する。

水槽の中にクロマグロ、キハダ、カツオなどが猛スピードでぐるぐると回る


 進んでいくと「大洋の航海者」というコーナーがあり、巨大な水槽の中にクロマグロ、キハダ、カツオなどが猛スピードでぐるぐると回っている。全体的に照明が暗いし、魚の泳ぐスピードが速いから、個々の魚に近づいて撮るのは不可能に近い。少し離れたところから、全体像を撮るのがせいぜいである。マグロだから、見学の人の中には「おいしそう!」などという嬌声を上げる若い女の子もいたが、とんでもない。こういうところのマグロは、抗生物質漬けになっているから、食べられたものではないと思う。しばらくカメラで魚を追ったが、うまく撮れないことから、やがて諦めることにした。

熱帯魚の水槽のイソギンチャク


 「世界の海」というコーナーになる。太平洋、インド洋、大西洋、カリブ海、深海、北極海・南極海に分けて展示してあるが、太平洋やインド洋、そしてカリブ海は、私の好きな熱帯魚ばかりである。近づいて撮りだしたが、こちらも、魚の動きが速くて、追いかけるのが大変である。むかし、簡単なデジカメで熱帯魚を撮って悦に入っていたが、そちらのときの方が、はるかに簡単だった。だいたい、魚にピントが合わないではないか・・・。適当に当たりを付けて底の砂地にピントを合わせても、実際に撮るとやはりぼけてしまうので、いささか悔しい。もちろん、魚を群れとして捉えて少し遠目で撮ると、まあまあの写真が撮れるのだが、それでは個々の魚が小さくなって、面白くもなんともならない。

熱帯魚の群れを撮る


熱帯魚の定番のフエフキヤッコ


 プロのカメラマンというのは、こういう場合にはどうしているのだろうという気がする。私も一応は写真誌などを読んで、シャッター速度がどうこうという数字を覚えていってはいるのだが、ともかく魚の泳ぐスピードが早すぎていけない。そうかといって、シャッター速度を極端に早くすると、画面が暗くなったり、荒くなったりして、ういう場合にチェックするとISO感度が6,400という高いレベルにまで上がっている。やっとくっきりした写真が撮れたと思ったら、それは泳ぎの遅い魚ばかりである。空しく時間が過ぎていったが、そうこうしているうちに、まぐれ当たりのようにして、たまたまピントと撮影の諸元がぴったり合う写真が撮れ始めた。うむ・・・魚の良い写真を撮るには、やはり経験と粘りが必要なのかもしれない。もちろん、プロ用のカメラを買う方がはるかに早道のような気もするが・・・。

角のあるテングハギ


リーフィ・シードラゴン


 気に入った魚の名を上げると、熱帯の海にいる、おでこの前に突き出す角のあるテングハギ、真っ青で美しいサドルラス(スズキ科ベラ目)、白と黄色の熱帯魚の定番であるチョウチョウウオ、葉を身にまとったようなリーフィ・シードラゴンなど、やはり熱帯魚が素晴らしい。特にリーフィ・シードラゴンは、どう見ても黄色の海草がふわふわ泳いでいるように見えるから、こうなるともう偽装の極限まで来ている。そうこうしていると、再び最初の頃に見たマグロが猛スピードで回遊する大水槽に出た。再び魚の写真を撮ると、最初のときよりは少しはマシな写真となった。熱帯魚の写真で練習した成果なのかもしれない。

少しはマシなマグロの写真


カリフォルニア海岸のジャイアントケルプ


 屋外に出て、「渚の生物」というコーナーの次は「ペンギンの生態」というコーナーで、フンボルトペンギンなどが泳いでいた。それらをざっと見た後、「海藻の林」に行くと、カリフォルニア海岸のジャイアントケルプがあって、感激した。これは、最大40メートルにもなる黄色い昆布のような海藻で、それが林立して海中で森のようになっている。だから、多様な生き物をはぐくむ母体になる。ラッコなども、こういうところに棲んで、貝を捕ってはお腹の上で打ち割って食べている映像を見たことがある。

ウミウシの仲間ヤマトメリベ(マキガイ綱メリベウミウシ科)


 「東京の海」というコーナーがあって、小笠原、伊豆七島、東京湾に分けて展示されていた。なかでも、ヤマトメリベ(マキガイ綱メリベウミウシ科)というのは、初めて見る動物である。これはウミウシの仲間らしいが、白いふにゃふにゃした体ながら、大きな口を広げていたのには、びっくりした。海には我々の知らない奇妙な生き物がまだまだいる。その隣の水槽では、三匹のイカがいて、まるでラインダンサーのようにそろって華麗な泳ぎっぷりを見せてくれた。

レストランの金魚


 それで水族館を見終わって、併設のレストランに行ったのだけれど、そこで金魚の水槽を見つけて、流金などの写真を撮った。うれしいことに、こちらは泳ぎ方がのんびりしているので、くっきりとした良い写真が撮れた。野生の魚と観賞用の魚の差である。さて、食事の後、帰る途中の公園の片隅に早咲きの梅と、ロウバイがあった。なかでもロウバイは、馥郁たるよい香りを発していて、その芳香に包まれながら、しばし、春の気分にひたった。

とてもよい香りを発していたロウバイ





(平成23年 1月15日著)
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