悠々人生のエッセイ



見事な大作り花壇







 そろそろ秋の気配を思わせる季節になったので、また今年も、新宿御苑の菊花壇展に行ってみた。皇室ゆかりの伝統を受け継ぐこの菊の展示会の由来は、一昨年にも触れた。それ以来、特にこれという知識が増えたわけでもない。ただ、今年渡された地図を見ると、大作り花壇の裏手に、「菊栽培所(立ち入り禁止)」とあるので、これらの美しい菊は、ここで栽培されているらしい。

嵯峨菊花壇


丸っこくてかわいい丁子菊


台湾杜鵑(たいわんほととぎす)


 そこでまた今年も、江戸菊花壇から始まり、見事な大作り花壇を見て思わず「おおぅー」と声をあげそうになった。そして繊細さのかたまりのような嵯峨菊に見とれ、丸っこくてかわいい丁子菊に思わず微笑み、もう咲き終わりに近い伊勢菊を見て残念な気がした。実はその花壇の前に、台湾杜鵑(たいわんほととぎす)があって、こちらも紫と白のなかなか渋い味わいに、しばしの間、思わず見入っていた。それから懸崖菊花壇があったのだが、残念なことにここは日当たりがよすぎて、強い直射日光が懸崖菊のちょうど下半分に当たるものだから、あまり良い写真は撮れなかった。例年、ここでいつも同じ経験をする。

懸崖菊花壇


大菊花壇


 上の池に沿って歩き、その先にある中国風の建物は、旧御涼亭といって、台湾在住の邦人が寄付をしたものという。そこからの上の池の眺めは、湖面に木々が映り込むなど、とても素晴らしいものだった。それから、この菊花壇展の呼び物ともなっている路地花壇を横目に見つつ、再び元来た道を戻った。そこに、大菊花壇があり、人の頭ほどの大きい菊が並ぶ様は壮観の一言に尽きる。しかもそれが、白い菊、黄色い菊、紫がかった菊の三種類がバランスよく規則的に並べられているのは、素晴らしい。大作り花壇とともに、この大菊花壇が白眉中の白眉といってもよい。私が一番好きな菊である。家内もまったく同意見だった。

大菊のひとつ


一文字菊・管物菊花壇


 その次の肥後菊花壇は、まだ咲いていなかった。これは仕方がないとして、最後は一文字菊・管物菊花壇である。その形から、一文字菊は御紋章菊といわれ、管物菊は糸菊といわれる。いずれも、白い丸い支えがないと形を保てないほどの繊細極まりない菊であるが、まさに観賞用として栽培されてきた歴史を感じさせる。例年は、実に美しいのであるが、今年は、猛暑のせいかどうかはよくわからないけれども、ようやく展示することができたという感じの出来である。

トランペッター


 それから、周遊路を通って、フランス式庭園の方へと足を伸ばした。途中、中の池の周辺では苔の上の落ち葉が美しかったり、花にクモの子供がとりついていたりした。しばし歩いてフランス式庭園に着いてみると薔薇園に着いた。いまがちょうど薔薇の盛りを迎えているようだ。しかも、いつも写真を撮りに行っている古河庭園とは違う種類の薔薇が多い。赤、白、ピンク、黄色と素晴らしい薔薇の花が迎えてくれる。そのひとつひとつを写真に納めていった。

フリージア


  薔薇がすぐ目の前にあるから接写が出来る古河庭園とは違って、こちらは薔薇との距離が少しある。だから、薔薇の花を画面いっぱいに撮ろうとすると、いつも使っている普通望遠レンズではいまくいかない。そこで、45mm〜200mmの中距離望遠レンズに取り替えて、こちらを使ってみた。このレンズは最近ではあまり使ったことがないが、ピントさえ合わせられれば、とても良い写真を撮ることができる。幸いこの日は、あまり風がない日だったので、このレンズは最適の日よりとなった。ただ、画面のボケ具合は、いつもの標準望遠レンズのようにはいかない。標準望遠レンズの場合、たとえば画面に木漏れ日が入り込むと、それがぼんやりした丸い形として写って、画面に独特の味わいが出る。しかし、この中距離望遠レンズでは、それが一様にボケてしまうことが多くて、その種の一眼レフ特有の味わいが出ないのである。どちらかというと、背景の色がそのままぼやけて入ってしまうので、背景の選択に気を遣うところである。

カウンティフェアー


 まあ技術的な話はともかくとして、これほどたくさんの美しい花を目前にすると、こういうテクニカルな話より、先に手が動いてシャッターを切っている。次から次へと撮っていったのだが、正直言って、裸眼で見た花と、こうして写真になった花とでは、かなり印象が異なる。いわば、その「写真美人」のような花の名を挙げていくと、次の花が気に入った。まずは、フリージアである。薔薇の花には概して赤やピンクが多いが、これは黄色い。しかも、撮った花は、手前の小さい花とその後ろの大きい花とが、ちょうど入れ子のような形となって、面白いきれいな写真を撮ることが出来た。

フレンチ・レース


アラベスク


 そうかと思うと、カウンティフェアーという薔薇は、やや小型のピンク色で、なかなか可愛い感じの花だ。たとえていうと、アメフトのチアガールみたいなものである。うーん、香りも素晴らしい。これに対して、トランペッターという真っ赤な薔薇は、大人の女性の雰囲気がある。大人の女性といえば、白い薔薇フレンチ・レースは清楚そのもので、これもまたなかなか味わい深い。アラベスクという赤と白の混ざった薔薇は、つい先日見たよさこい踊りのように、大変賑やかな感じがある。あった、あった、プリンセス・アイコという花が・・・いつかこのように名付けた薔薇が出ると思っていた。ピンクで、かわいらしい感じの花である。そのほか鑑賞した薔薇は何十種類にも及び、とても楽しい一日だった。

プリンセス・アイコ






(平成22年11月 7日著)
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