悠々人生のエッセイ








 9月になったというのに、日中は摂氏35度を超える暑い日々が続く。気象庁の発表によると、この8月は例年より2.25度も高く、1898年に観測を始めて以来、最高の気温だったそうだ。道理で、最低気温が25度を上回る熱帯夜がこれで連日 50日も続いている。だから、日本列島のあちらこちらで異変が生じている。そういう異変は、まずは最も弱いところに現れる。とりわけお年寄りは、概して体温の調節機能が弱くなってきているから、誠に厳しい日々が続いている。例えば、クーラーがない家に住んでいるお年寄りの中には、引き続く熱帯夜に耐えられず、中には、熱中症で亡くなる方も珍しくなくなっているほどである。

 我が家も、二台のエアコンを昼夜ノンストップで動かして、やっと何とか過ごしているという有り様である。しかし、ああ何ということか・・・その頼りのエアコンが、一昨日あたりから、カタカタという異音を立て始めたのには参った。普段の年ならどうということはないが、さすがに今年の場合は、エアコンの不調は命にかかわる問題だといっても、大袈裟ではない。このエアコン、据え付けてからもう14年になるから、そろそろ限界かもしれない。もう代えどきだと思って、家内とともに有楽町のビックカメラに行った。そして山のようにあるエアコンのモデルを前にして、あれにしようか、いやこれも良さそうだなどと、ひとしきり迷った末に、結局、三菱電機のエアコン、霧ヶ峰を注文して帰ってきた。これは、ウチの娘が生まれた年に買った昔のエアコンと同じシリーズ名だから、さしずめ、その三代目の子孫ということかもしれない。なにかしら縁があるということだろう。

 やれやれ、物入りなことだと言いつつ、家に帰って来て、家内と居間でひとしきり、今度買ったエアコンの話をしていた。自動お掃除機能というのは、ズボラな我が家にはピッタリだ。あの、人がいる場所を探して、そこをスポット的に冷やすなんて、すごいわね、という調子である。そのとき、暑くなったので居間のエアコンを付けた。すると、これまであれだけガタガタという嫌な音を立てていた居間のエアコンが、我々の話に聞き耳を立てて反省したのかと思うほど、静かに動き始めたのには参った。

 実は、このエアコンが騒音を立てていたとき、もうひとつ、頭の痛い問題が生じていた。それは、私が自宅で愛用しているパソコンのハードディスク(HDD)もまた、カラカラという、妙な音を立て始めたのである。これは、ハードディスクがクラッシュする不吉な前兆ではないかと思えたのである。実は、満更、思い当ることがないでもなくて、数日前の休みの日に、しばらくやってなかったデフラグを試みた。それが、この暑い気候の中にもかかわらず、連続で20時間余りに及んでしまったのである。原因は、330GBもの写真とビデオでいっぱいのパソコン本体のDディレクトリに加えて、たまたま外付けになっていた500GBの大容量ハードディスクまでデフラグをしてしまったからだと思う。そのデフラグを始めたときに、外付けになっていたことに気付かなかったものである。

 それくらいのことで、いちいちダウンするのかと言いたいところだが、どうもそれ以来、パソコンを開いてしばらくすると、「ウィーン」といったかと思うと、カタカタカタッという騒音が始まる。とりわけ、いくつかソフトを立ち上げているようなときには、そこでフリーズしてしまうこともあるのだから、尋常ではない。つくづく考えてみると、今年の正月休みにこのパソコンのハードディスクを大容量の500GBに換装したせいかもしれないとも思えるが、それにしては、今日まで何の問題もなく動いて来てくれているから、そうではないと思いたい。

 ところで、たまたま運の良いことに、ちょうど先週、外付けハードディスクに、CディレクトリとDディレクトリのバックアップを取ったばかりである。だから、ハードディスクのクラッシュは、恐れるに足らずなのである。しかし、まさかこれほど早くハードディスク全部がクラッシュの危機に瀕するとは思わなかったから、イメージによるバックアップは、Cディレクトリだけしか取っていない。このままだと、新品ハードディスクを買って来て、まずCディレクトリを復元し、それから、ソフトを使ってパーティションを分けてDディレクトリを作るほかない。しかし、そのパーティションを分けるソフトなるものは使ったことがないから、一抹の不安がある。だから、この案は、いざというときのために取っておいて、まずは今のハードディスクが動いている間に、可能ならばCディレクトリ及びCディレクトリ、そのほか管理用らしき二つばかりの小さなディレクトリについて、まとめてバックアップを作ってしまうことは出来ないかと考えた。

 そこで、エアコンの冷気が直後当るようにしてパソコンを開き、祈るような気持ちでスイッチを入れた。立ち上げるソフトの数がまだ少ないせいか、幸い異音は聞こえない。よし、今のうちだと思い、開いてしまっている余計なソフトは全て閉じて、イメージによるバックアップ・ソフト、Acronis True Image LEというものを立ち上げた。これは、このバッファローのハードディスクを買ったときに、おまけに付いていたソフトである。それが動いたのを確認して、この際Dディレクトリをバックアップするときの負荷を減らすために、写真のフォルダを消去した。これは、330GBもの大きな容量を占めているし、既にバックアップ済みだからだ。その上で、Acronis True Image LEを動かしたのである。全てのバックアップには、6時間余りかかったが、ともかく必要なバックアップ・イメージは出来た。

 次に、ハードディスクの新品が必要となる。今年の始めに一度ハードディスクを取り換えているから、それから8ヶ月が経過しているので、もしかすると、さらに大容量のハードディスクが手に入るかもしれない。また秋葉原のヨドバシカメラに行き、店員さんに聞いてみた。すると、ノート内蔵用で1TBつまり、テラバイト級のハードディスクがあるらしい。これは、凄いことだ。いささか心が動くが、少し厚みがある筺体のようなので、パソコンによっては内蔵が出来ないなどの問題が生ずるらしい。それは困るので、安全サイドをとって、買わないことにした。それ以外のハードディスクだと640GBのものがあるが、残念ながら、今は欠品とのこと。早く手に入れたいものだから、結局、現在のものと同じ500GBのハードディスクにした。

バッファローのハードディスク付属の引っ越しソフト


 家に持ち帰り、前回と同じく、まずフォーマット、つまり初期化をした。これには、また6時間もかかった。以前の経験があるので、初期化の仕方は熟知している。それ以外は特にこれという問題もなく、初期化そのものは、スムーズに終わった。そして、いよいよイメージの復元という段階になるが、その段階でのAcronis True Image LEは、まだ使ったことがないから、これ以降は、私にとって未知の世界となる。ワクワクするが、これこそ、パソコンの醍醐味といえよう。さて、まずはパソコン内蔵の壊れかけたハードディスクを、フォーマット済みの新品に取り替える。このとき、透明な絶縁シートを間違いなく取り付けなければならない。四隅のビスをしっかりと締め、そのカバーをパソコンに取り付けて簡単に終わった。そして、あらかじめ作っておいたCDをトレイに入れた。

Acronis True Image LEの画面


 すると、昔のようにいちいちブートセクターの設定をしなくても、自動的にCDから立ち上ってくれた。最近のパソコンは、こういう点は、誠に便利である。それで、Acronis True Image LEの画面が現われる。「復元」をクリックして、次に、Acronis True Image LEの「セーフ版」か「完全版」かの選択で、よくわからないが、完全版だと時間がかかりそうなので、セーフ版を選ぶ。復元元のファイルが入っているディレクトリ名とそのファイル名を入力し、復元先のディレクトリを指定した。そしてディスク1を選択。最後に、「別のパーティションを作成するか」と、「ベリファイするか」と続けて聞かれたが、余計なことをすると時間がかかるだけなので、それぞれ、「しない」、「スキップ」を選んだ。すると、復元が開始されたのである。

 CDトレイがカタカタと動いて、バックアップのときに見慣れた青い画面が現れ、復元が始まった。金曜日の午後9時頃のことである。最初、残り時間が6時間と出た。何だ、バックアップと同じ時間がかかるのか、長いなぁと思う。ところが、時間が経ち、パソコンに目をやるたびにその残り時間が延びていくではないか。その結果ついに、寝る前には1日になっていた。一体どうなっているのだろう。スクリーンセイバーも働かないから、このままだと、液晶画面が焼き付きかねないので、せめて画面の輝度を落とそうとキーボードを操作してから、寝ることにした。

 翌土曜日の朝になった。起きて真っ先にパソコンの様子を見に行った。画面は上下二段に分かれていて、上の段には現在の処理状況が、下の段には全体の処理状況が、それぞれ緑の線で示される。ところが、なんと、139GBあるCディレクトリの復元が、まだ終わっていなかった。遅々として進まないとは、まさにこのことである。結局、それが終わったのが、その日の昼過ぎとなった。それで次に、Dディレクトリの復元処理に移ったのであるが、こちらの方は、339GBもある。でも、実際のデータ量はCディレクトリの半分くらいだから、時間も半分程度だろうとタカをくくっていた。ところが、処理済みの緑の棒が、なかなか伸びない。こわれてしまったのかと思っていたところ、やっと緑の棒が一本、点灯した。ははあ、動いているではないか・・・。これは、長期戦になると覚悟した。それで、パソコンが熱をもって動かなくなるのを防ぐために、パソコンの筺体の下の両脇に、厚手の本を置いて、底面の熱を逃がすような工夫をし、かつ、エアコンの冷気がパソコンの送風口に直接当たるようにした。

 そして、しまいまで復元処理が終わるのを待ったのである。途中、何度も進行状況を確かめた挙句に、遂に終わったのは、月曜日の午前7時を回っていた。つまり、延々60時間余りもかかってしまったというわけである。我ながら、良く辛抱強く待ったものだと、呆れるばかりである。それで、復元終了の表示を確認したところで、いったんパソコンの電源を落とした。それから10分後、これまた祈るような気持ちでパソコンのスイッチを入れたところ、セーフ・モードの画面となった。それから再起動を選択したところ、通常起動に移り、その結果、出た、出た、いつもの壁紙が出て、画面の解説が現われた。そのほか、何か異常はないか確認したところ。特段の支障は見当たらない。成功したようである。良かったと、ほっとしたものである。しかしながら、このハードディスク引越し方法、よほどの忍耐力がないと採用し難いのではないだろうか。復元は出来るには出来たが、あまりにも常識外れの時間がかかった。別に良い方法があるなら、私の使ったこのAcronis True Image LEというソフトは、あまりお勧めすべきではないというのが、今回の私の結論である。





(平成22年9月 7日著)
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